・・・だけじゃない矯正治療! -3咬む力編-
矯正歯科を訪れる患者様の主訴のほとんどは、見た目の改善です。
つまりデコボコした歯の並び(叢生)や、前歯を後方に下げ口元を改善するのが目的です。
しかし大切なのは審美的改善ばかりではなく「審美」と「機能」のバランスをどうとるか?という事だと考えています。


では当院が全顎治療(上下顎にわたる永久歯列期の治療)において考慮している4つの「機能」、顎関節・呼吸・咬む力・咬み合わせについて説明致します。
3つ目は「咬む力」(咬合力)についてです。
(今回の内容は2024年06.03「咬む力(咬合力)のコントロールは可能か?」で記載しましたが、治療目標にすべき4つの機能の1つとして再度同様の内容ですが掲載しました。)
しっかり咬んで食べることは良い事ですが、なかには日中のくいしばりや睡眠時の歯ぎしりが強すぎて歯の摩耗・破折、骨隆起形成、補綴物破損などその影響が認められる場合もあります。
こうした現象は、顎・顔面骨格形態と密接に関係しています。
日本人においては面長(おもなが)タイプよりも丸顔タイプに多く見られます。
なかでもエラの張っているタイプは咬む筋肉が発達しており、下顔面高は小さく前歯のオーバーラップ(垂直的重なり具合)が大きいという特徴があります。
こういった咬む力の強すぎるケースは治療後、歯の沈み込みを起こす事が少なくありません。
当院では多くの歯で上下の顎を支えるという観点からも、なるべく歯数を少なくする事なく(なるべく小臼歯非抜歯)治療を行っています。
そしてその咬む力を評価する為、全顎治療の術前検査として筋肉(咬筋)の表面筋電計によるスクリーニング検査を行っております。
この表面筋電計を用い咬む筋肉の評価を行った上でのボツリヌス療法が近年行われています。
この療法は閉口筋の筋緊張を減少させる効果がある事が知られています。
美容外科等では「しわ取り注射」または「ボトックス注射」として応用されています。
また、このボツリヌス療法は顎関節症の病態の1つである咀嚼筋痛障害の改善も報告されており覚醒時や睡眠時の「くいしばり」や「歯ぎしり」にも有効とされています。