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咬む力(咬合力)のコントロールは可能か? -歯科におけるボツリヌス療法の応用-

固いものでもしっかり咀嚼できることは良い事ですが覚醒時(昼間)の“くいしばり”や睡眠時の“歯ぎしり”など咬む力が強すぎる為、歯が折れたり補綴物(差し歯、入れ歯)の破損が生じるケースがあります。こういったケースの多くは顔面骨格が丸顔でエラ(下顎角)の張った顔貌をしています。また咬み合わせは上下顎前歯が大きくオーバーラップし、上あごや下あごに骨の隆起が見られたりもするという特徴があります。

つまり咬む筋肉(閉口筋)が発達しており、それらの筋肉が過大に働く事で起こります。

顎関節症の中にも“咀嚼筋痛障害”といって咀嚼筋の痛みが発現するケースがあります。これは覚醒時(昼間)の長時間における上下顎歯の接触や無意識化のくいしばり、または睡眠時(夜間)の歯ぎしりが関係していると言われています。

また矯正治療におきましてもこういったケースに遭遇する事があります。全顎治療においては小臼歯抜歯に伴う歯数の減少が、過大な咬合力の発現によって下顔面の高さ(咬合高径)の維持を困難にする事もあると考えております。

近年、こういった筋肉の過緊張を緩和するボツリヌストキシンが医療分野で応用されています。医科領域においては眼瞼痙攣、片側顔面痙攣、重度の原発性腋窩多汗症等は保険適応となっています。特に美容外科においては「しわ取り注射」として多用されています。

歯科領域においては咬む筋肉(閉口筋)への応用が国内の学会でも報告されています。昨年の日本睡眠歯科学会に続き、今年(2024年)7月開催の日本顎関節学会でも歯ぎしりにおけるボツリヌス療法のシンポジウムが予定されています。

当院におきましても顎関節症、全顎矯正治療(成人矯正)の表面筋電計での客観的評価とボツリヌス療法の導入を準備中です。今暫くお待ち下さい。

表面筋電計検査
咬筋への注射